Research Abstract |
将来打ち上げが予定されている衛星塔載レーダーへの適用を前提として,既開発の3次元風速と水蒸気相変化量の同時推定手法を,静止気象衛星GMSの情報から推定される広域の3次元エコー分布に適用し,広領域データ特有の時間分解能の粗さや広領域での降水現象という特性そのものが算定結果に及ぼす影響を調査した。さらに,これまで用いてきた等方水平収束という便宜的な仮定を推し,あらたに渦なし流れという物理的意味の明確な仮定を用いて算定できる手法に発展させた。 広域の3次元エコー強度分布の推定には,気象庁気象衛星センターによって開発されGMS情報から推定される降水強度指数を強水強度の水平分布とし,さらに建設省の3次元レーダーを用いて別途推定される異なる高度間のエコー強度に成立する関係式を用いた。一方,レーダー情報の時間分解能(5分)に対してGMS情報の時間分解能(1時間)が粗いので,基礎式中の時間微分項を無視した。これら2つの処理により,用いる3次元エコー強度の時間・空間分解能が粗くなり,その結果分布形が3次元レーダーにより直観測されるものより滑らかなものとなる。その結果,推定される鉛直風速および水平収発散量の絶対値が,3次元レーダー情報を直用いたものより,10%程度小さくなることがわかった。しかし,それぞれ鉛直風の上昇,下降域は実現象にそくした形で算定された。また,渦なし流れの仮定の導入により,それまで見られていた水平風速分布のギャップは解消され,スムーズな場として算定されるようになった。 以上により,日本全国を含むような広領域においても一連の降雨域内であれば,衛星レーダーから観測される3次元エコー強度分布を用いて十分に,風速を算定して行ける可能性のあることが明らかとなった。
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