まず、ポテンシャル理論に基づく理論式の展開および数値計算プログラムの作成をおこない、ついで、二次元造波水槽を用いて微小振幅波による実験をおこなって理論解を検証した。得られた結果の概略は以下のようである。(1)比較的波長が長く、通過率が極小値を取る波長近傍までは理論解析によって、波の遮断効果(反射率・通過率)を実用上十分な精度で推定する事が出来るが、通過率が極小となる波長よりも入射波長が小さくなると理論値と実験値には大きな差異が生じる。(2)この、両者の差異が大きくなる波長範囲では2倍および3倍の周波数成分波が励起され、線形理論に基づく解析では現象を十分には表せない。(3)しかし、水平版の動揺には2倍や3倍の高次の周波数成分はほとんど生じない。(4)鉛直動揺の平均位置は静止時から上の方に移動し、その大きさは入射波の周期によって変化する。 いくつかの条件について行った理論計算より次のことが明らかになった。(1)二重管係留システムは水平版の鉛直動揺を許容するが、固定された没水水平版の場合に見られるように特定の波長の入射波を完全に遮断する機能を有する。(2)水平版に作用する鉛直波力は固定した場合の波力と較べると大きく減少する。(3)鉛直動揺には、浮遊構造物に見られるような、特定の周期の波に対して共振現象を生じる事はない。 ついで、水槽実験において、波の有限振幅の影響(波の非線形性)を調べた結果、以下のことがわかった。(1)入射波の周期が小さい場合には、通過率は波形勾配が大きくなるとともに増大するが、通過率が極小となる周期を境として、逆に減少するようになる。(2)水平版の鉛直動揺の無次元振幅は、反射率や通過率ほどには波形勾配によって変化しない。(3)入射波の周期によらず、動揺の平均位置は、波形勾配が大きくなるにつれて、いったん増大しその後は減少する特性を示す。
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