Research Abstract |
本研究は、我々が既に見い出している,オレフィンとアセチレンとの[2+2]付加反応において,従来基質の制限が大きく,その適用範囲に限りのあった触媒系を,飛躍的に発展させ,その適用しうる基質の範囲を拡大し,より任意な線状多環化合物合成を行なおうとするものであるが,平成4年度において次のような重要な成果を得た。1.Ru(COD)(COT)/アルキルホスフィン系において,ノルボルネンとアセチレンジカルボン酸ジメチルエステルとの反応において,アルキル基を選択することにより,ほぼ定量的に[2+2]付加反応が,選択的に進行することを見出し,Diels-Alder反応と組み合わせることにより高収率で線状多環化合物を合成することが出来た。2.Cp^^*Rucl(ジオレフィン)型錯体はノルボルネン類とアセチレンの[2+2]付加反応に,きわめて高い触媒活性を示した。特に,アセチレンとして,芳香族および脂肪族内部アセチレン,さらにはエステル基,アセタール基を有するアセチレン類にも広く一般的に適用が可能であり収率,選択性ともに高いことが明らかになった。さらに興味深いことには,末端アセチレンとノルボルナジエンとの反応においては,[2+2]付加物が中程度の収率で得られるが,同時に,1,3-ジ置換ベンゼンが生成することが見出された。3.反応機構について検討したところ,2.の反応においては,まずアゼチレンとノルボルネン化合物が同時に配位したルテニウム錯体が生成し,環化反応によりルテナシクロペンテン錯体が生成する。このとき,ノルボルネンの配位はπ-電子の張り出しにより必がexo配位をする。2置換アセチレンの場合は還元的脱離反応によりシクロブテン化合物が生成するが,末端アセチレンの場合には,レトロ-Diels-Alder反応が起り,ルテナシクロペンタジエン錯体が生成し,その環元脱離により,2置換ベンゼンが生成することが推論された。
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