Research Abstract |
圧力変動吸着(PSA)法により,空気からN_2とO_2を分離濃縮するプロセスには,ゼオライト系と炭素系の2種の吸着剤が用いられている。低価格のゼオライトに着目して,吸着分子が進入できる細孔径の精緻な制御法としては,陽イオン交換や珪素化学蒸着がすでに報告されている。5A型と称されるA型ゼオライトのCaイオン交換体やFaujasite型ゼオライトでは,本来,分子径が大きいにもかかわらず,N_2の吸着量の方がO_2の吸着量よりも多く,これはN_2分子とゼオライト表面の四重極子相互作用によると考えられている。既報の細孔制御は細孔入口の物理的閉塞量の制御に基礎をおくものであるから,N_2とO_2の吸着容量序列の制御や逆転が実現されているものの,吸着容量も極端に低下する欠点がある。 本研究は,5A型やNaX型,CaX型,NaY型ゼオライトに対して,n‐ヘキサンプラズマ(約1Torr:発信周波数13.56MHz:出力約30W)中で,30分〜90時間処理しさらに,N_2流中で室温から1.6℃/minで600℃まで昇温し,1時間保って炭素を1〜2wt%担持した。この処理によりO_2とArの吸着容量は大きな変化を示さなかったが,X型ゼオライトのみ,N_2吸着量に顕著な増加が認められた。このN_2吸着量(30℃)の増加は,炭素担持量約1%で最も顕著になり,NaX型ゼオライトでは無処理物に比べ40%以上にも達した。また担持量が2wt%以上では,吸着量はN_2,O_2,Arともに無処理の場合よりも低下し,細孔の閉塞が示唆された。 吸着水分の示差走査熱量測定を行い,炭素修飾されたゼオライト表面の疎水化を確認した。またCaX型ゼオライト担体と,その0.9wt%と2.7wt%の炭素持物についてNH_3‐TPD測定を行った。炭素担持量が増加するに従い,脱NH_3量は,弱酸点(200℃付近)は増加し,強酸点(300〜450℃付近)で減少し,本処理により炭素が細孔内にも担持されていることを示唆した。N_2吸着量の特性的な増加は,細孔内外に担持された炭素の疎水化効果と四重極子相互作用の強化効果によると推定された。
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