Research Abstract |
1.現在,青果物の流通においては(1)消費地大市場への集中出荷への加速,(2)量販店の先取りなど取引方法の変化という問題があり,産地はこの2つの問題に対応すべきか検討が必要になっている。本研究はこの課題に接近するため,理論的数量的分析と流通業者への聞き取り調査を実施した。研究結果を要約すると以下の通りである。 2.(1)地場市場出荷と大市場出荷の2正面対応の必要性を論証するために東京,大阪,福岡の卸売市場の需要関数を推計し,需要の価格弾力性と価格伸縮性を求めた。すなわち,価格伸縮性を福岡,大阪,東京の順に示せば次のとおりである。いちごが-0.516,-0.806,-1.297,なすが-1.812,-1.835,-2.066,みかんが-2.247,-4.545,-4.016,かきが-1.120,-1.056,-2.364であった。 (2)以上の需要条件のもとでもし仮に各青果物を月間50トン追加的に出荷すれば,価格の下落幅は福岡,大阪,東京の順に,いちごが85.7円,80.4円,59.9円,なすが103.3円,68.7円,36.5円,みかんが20.3円,16.1円,12.3円,かきが34.6円,15.2円,19.3円となる。 (3)各市場への出荷量増大による価格下落幅と輸送費との関係で,出荷市場の選択が必要であることを数量的に提示した。 (4)卸売市場における卸売業者,仲卸業者,量販店の責任者に対する聞き取り調査では,産地の維持拡大,産地選果場の再編整備,出荷方法の整備,産地の正確な生産・出荷情報の提供を望む声が強かった。 (5)本研究の成果の一部は「卸売市場における青果物の需要関数計測と産地の流通構造変化への対応」『農業経済論集』第43巻第2号,1992年として公表している。
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