Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脊髄前角細胞におけるシナプスの変化について検討した。臨床および病理学的にALSと診断された3症例,およびage-matchさせた対照3例を用いた。剖検は全例3時間以内に行なわれた。剖検時,各症例の腰髄(L1-5)を水平断で切り出し,2%グルタールアルデハイドで固定,型の如く処理した後,エポンで包埋した。約1μの薄切切片にトルイジンブルー染色を施して光顕で観察し,明確な核を有する前角細胞を確認した後,超薄切片を作製し,酢酸ウラニウムとクエン酸鉛の二重染色を施して電顕で観察した。対照例では,細胞面積が2000μm^2以上の大型前角細胞を検索した。大型前角細胞を倍率1400で,また細胞表面に接して存在する各シナプスを倍率8000でそれぞれ写真にとり,最終倍率それぞれ2660および15200まで引き伸ばし,細胞面積,各シナプスの数,全長およびactive zoneの長さをKontrom computerized image analyzerで測定した。同様の方法で,ALSの前角細胞を検索した。対照例では,前角細胞の面積が大きくなるにつれて,シナプスの数,シナプスの全長およびactive zoneの長さが有意に増大する傾向がみられた。ALS症例では,細胞面積,シナプスの数およびシナプスの全長が対照例に比較して有意に減少していたが,active zoneの長さには有意差が認められなかった。Central chromatolysisを起こしている前角細胞は,その面積,シナプスの数,シナプスの全長に加えて,active zoneの長さも有意に減少していたが,これらの所見から,ALSでは病初期からシナプスの数の減少が認められるが,active zoneが増大し,代償機転が働いているものと思われる。病期の進行あるいは前角細胞の変性の進行に伴い,active zoneも縮小し,重大な機能障害を起こすものと推察される。
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