Research Abstract |
チタン鋳造体の表面反応層がその疲労特性に及ぼす影響を把握するための基礎的知見を得る目的で,繰り返し三点曲げ試験の過程で試験片から発生するアコースティックエミッション(AE)を測定して解析した.4kg/cm^2の圧縮空気を電磁弁で制御して試験片の中央部に1.5回/分の繰り返し荷重を与えた.スパンは30mmとし,弾性曲げ疲労の領域を検討するため,試験片中央部でのたわみが約0.5mmになるよう(約30kg/mm^2の最大曲げ応力に相当)負荷し,試験開始から30分間(2,700回の繰り返し負荷)に記録したAE事象の最大振幅分布を求めた.as-castの場合(a)は2つのピークを有する振幅分布であるのに対して,試験片の表面を軽く研磨した場合(b)と表層200μmを完全に除去した場合(c)の振幅分布は1つのピークしか持たなかった.つまり,(a)の場合は最大振幅が60〜70dBのものと50〜60dBの2種類のAEが発生したが,(b)の場合は60〜70dBのそれが著しく減少して,50〜60dBのものが大半を占めた.さらに(c)の場合は,AE総事象数が約1/3に減少するとともに,最大振幅が40〜50dBのごく弱いAEだけになった.このことから,繰り返し負荷の開始初期において発生したAEは,最大振幅が60〜70dB,50〜60dB,および40〜50dBに分類され,高振幅のAEは反応層内での微視的き裂の発生と成長によることが考えられる.このようなAE特性の著しい相違から,反応層が疲労挙動に大きな役割を果たすことが示唆されたが,最終的結論を得るには,疲労過程の中期および後期についてもAE解析を行うとともに,微視的き裂の分布や動態を観察し,疲労き裂の進展も調げる必要がある.
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