Research Abstract |
本研究の目的は,変動振動の物理計測値に対する人体の感覚的大きさ(心理評価値)との関係で,合理的な測定評価法を系列範ちゅう法およびME法を用いて明らかにすることである。振動は,その発生形態により定常振動,変動振動に分類され,さらに変動振動は,周期的間欠的に変動する振動と不規則かつ大幅に変動する振動に分類される。現在の振動規制法では,周期的,間欠的に変動する振動が変動ごとの指示値の最大値の平均値で評価されるのに対して,不規則かつ大幅に変動する振動については,5秒間,100個またはこれに準ずる間隔,個数の測定値の80%の上端値の数値をもって評価されている。この不規則かつ大幅に変動する振動に対しては,現行の評価方法で得られた振動レベルでは実際の人体での感覚よりも低い評価となり住民の被害の訴えに合っていないとの指摘がなされている。このようなことから,不規則かつ大幅に変動する変動振動に対する合理的な測定評価法を明らかにする必要がある。また、ISO2631,BS6841などの規格においては,running r.m.s. valueやVDVが提案されている。すなわち,最近のISO,BSでは,振動の評価に時間積分値,パワー平均の概念が導入されてきている。しかし,このようなBS,ISOの新しい評価方法で得られた物理評価値と心理評価値との関係が日本人に対してどのようになるかは何等明らかにされていない。そこで,実際の道路交通振動を大阪府下15ケ所で測定し、各種の評価方法で分析し,現行の評価方法で得られた値とISO,BSの評価方法で分析した値との比較検討を行なった結果,現行の評価方法で得た値とISO,BSで得られた値とは,対応を取ることはできなかった。また,道路交通振動を代表する振動のパターン波形がハニング形になることが明らかになったので,その振動の物理量と心理量の関係をME法を用いて実験室実験を行なった結果,VDVが最も対応の取れる物理評価値であることが明らかになった。
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