Research Abstract |
アメリカ,EC,ASEAN,NIESに設立された日本の多国籍企業の直接投資によって発生した国際物流ネットワークを計量分析によって地域別に考察し、その特徴を以下のようにとらえた。第1に、アメリカ現地製造業のロジスティックスのグローバルネットワーク化は内生的に構築されておらず、また外生的刺激にも反応していない。日本よりの調達、現地調達および現地販売を軸に他地域とは独立して自己完結的に構築されてきた結果、アメリカのモデルは他地域の現地製造業モデルに比して簡潔でありながら、説明力は比較的高いという特徴をもつ。そこには、日米間の組織型物流システムという安定的メカニズムに整合するシステムが生み出されている。第2に、EC現地製造業の製品は、プロダクトサイクル面より、日本,ASEAN,NIESの製品とグローバルな補完ネットワークを形成している。このようなオープンなロジスティックスシステムは、ECへの直接投資にもとづく我が国の輸出物流がとりわけアメリカとアジアの狭間にあって調整されている状況を反映している。それは縮少均衡的調整領域であるといえる。第3に、ASEANに立地する我が国の多国籍企業の現地法人の行動モデルは、アメリカやECの現地法人に比して、はるかにグローバルでオープンである。それは先進国に立地された我が国の現地法人の利益率のバッファーとして機能している。またそれは我が国の多国籍企業のグローバル戦略の最終的な調整領域なのである。ASEANのこの優れた調整能力は、アセアン現地法人自体の高い調達力弾性値に負うところが大きい。それがASEANの拡大均衡的調整能力を支えている。最後に、NIESはこのようなASEANの行動の完全な枠外におかれている。プロダクトサイクル面で両者は完全に樓み分けることによって、アジアにおける異なる二大経済圏として機能しているのである。
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