Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ヤドリバエが、寄主体内で、寄主の生体防御および他の寄生者との競争を回避し寄生を成功させるメカニズムを明らかにすることは、天敵利用の効率を評価する上で重要である。本年度は、これまで行ってきた寄主探索機構の解明とあわせて、ヤドリバエの寄主制御機構について重点的に研究を行うとともに寄主体内での寄生バチとの競争に着目した。アワヨトウをはじめとするチョウ目幼虫の天敵であるノコギリハリバエ(以下ノコギリ)は、寄主の中腸に寄生し、寄主の気管を利用してシュノーケルのように呼吸をする。今回、本種が中腸に潜行し呼吸を開始するまでの一連の行動を生きた状態のまま観察・撮影することに成功した。また、このハエの幼虫は、寄主が摂食している間は、中腸壁と囲食膜の間隙に留まり発育をほぼ停止しているが、寄主が前蛹になり囲食膜が排出されると中腸腔内で速やかに発育する。一方、カリヤコマユバチ(以下カリヤ)は、アワヨトウの血体腔に寄生するが、寄主幼虫が蛹になると脱出できないため、寄主の発育を制御し前蛹化を遅延させる。両者が同時にアワヨトウ幼虫に寄生した時、寄主の前蛹化が起こらずノコギリが寄生に失敗するのではないかという仮説を立て、その検証を試みた。しかしながら、終齢(6齢)0日目の寄主に両者をほぼ同時に産卵・寄生させた場合、多くの寄主が未寄生寄主と同様にほぼ5日目に前蛹化し、ノコギリだけが寄生に成功した割合が高かった。5齢0日目の寄主に両者を寄生させた時は、寄主が前蛹化しノコギリだけが寄生に成功した割合と、寄主が前蛹化せずカリヤおよびノコギリの両方が寄生に成功した割合が同等にみられ、カリヤだけが寄生に成功することは少なかった。従って、両者が同時に寄生した場合、カリヤに比べノコギリが寄生に成功する割合が高いことが明らかとなった。このヤドリバエは、体腔ではなく中腸に寄生することによって、寄主の生体防御を回避するとともに他の寄生者との競争を避け、寄生成功率を高めている可能性が示唆された。
All 2007 2006 2004
All Journal Article (5 results)
Journal of Applied Entomology 13・4
Pages: 289-292
Japan Agricultural Research Quarterly 41・3
Pages: 227-232
Applied Entomology and Zoology 41・4
Pages: 659-665
植物防疫 60・12
Pages: 587-590
40015188272
Acta Dipterologica 21
Pages: 123-127