Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
昨年度の続きで溶媒理論の開発の現状を把握するため、PNNL研究所Dupuis博士の研究協力を得てab initio分子動力学計算をもちいた水溶液モデル中の水分子のイオン化過程の動力学解析方法の提案を行った。運動エネルギーを反応中心部分とその周辺(媒体)部分に分割する形式を提案し、動力学計算で得られた2種類の配置の水クラスターのtrajectory計算の結果を解析した結果、四面体型の水素結合ネットワークを持つ構造では初期反応過程で溶媒の配置緩和の効果が大きく、環状のクラスターでは反応部位(プロトン移動反応)でのエネルギー変化が大きいという特徴付けができ、周囲の場の効果の説明を行えた。次の段階ではこれまでの研究を踏まえて、溶媒と溶質の直接の相互作用である第一溶媒和圏を高精度の分子軌道計算で扱う積分方程式理論と電子状態計算を組み合わせた手法を開発した。手法の最初の応用例として、希ガス凝縮相中のHXeCCHの研究における希ガス分子依存性の研究を行った。アルゴンやクリプトンマトリックス中におけるHXeCCH分子は、キセノンマトリックス中よりもIRスペクトルがブルーシフトすることが観測されている。このシフトは1:1分子比の高精度ab initio計算で再現できないとの報告があり、2個以上の希ガス分子を取り入れた研究の必要性が示唆されていた。本研究では統計力学に基づく積分方程式理論の計算手法をHXeCCH分子へ適用することで希ガス凝縮相が分子に与える効果の理論的解釈を実施した。BSSE補正を行ったMP2レベルのポテンシャルエネルギー曲面を用いた相関関数計算により、クリプトン中では振動に伴う凝縮相の変化が大きいことがシフトに影響し、アルゴン中ではキセノンよりも分子が等方的に分布をすることでスペクトルのバラエティが増えたと説明し、マトリックス効果の理論研究手段を提案できた。
All 2007 2006 2004
All Journal Article (4 results)
Bull. Chem. Soc. Jpn., 40(4) (In press)
Journal of Chemical Physics 124(16)
Pages: 164310-164310
Journal of Chemical Physics 124・17(accepted)(In press)
Chemical Physics Letters 384
Pages: 6-6