臓器への遺伝子導入による細胞増殖の誘発と制御に関する研究
Project/Area Number |
05152074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Cancer Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金田 安史 大阪大学, 細胞生体工学センター, 助教授 (10177537)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
Fiscal Year 1993: ¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
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Keywords | 細胞増殖 / 腎糸球体硬化症 / 遺伝子導入 / HVJ-リポソーム / アンチセンスオリゴヌクレオチド / 血管再狭窄の抑制 |
Research Abstract |
組織細胞の異常増殖によって引きおこされる疾患の病態解析を分子レベルで行ない遺伝子レベルでの治療の可能性をさぐることを目的として、我々の開発したHVJ-リポソーム法を用い、種々の遺伝子を生体臓器へ直接導入・発現させた。標的臓器としては腎糸球体と血管平滑筋に焦点をあてた。共に、その細胞増殖が腎炎や高血圧等の疾患に深く関与するからである。SV40のT抗原の遺伝子をHVJ-リポソーム法によりラットの左腎動脈より導入すると、その遺伝子発現は腎糸球体に限局し、20〜40%の糸球体に1〜2週間にわたってT抗原が存在した。このとき大きな病理変化は認めなかった。次にTGF-β1遺伝子を同様の方法で導入すると、3日後から、I型とIII型のコラーゲンを中心とした細胞外基質の増生が認められ、ラットは一過性の蛋白尿を呈した。メサンギウム細胞の変性のマーカーであるα-smooth muscle actinの発現が誘発された。同様にPDGF-B遺伝子を導入すると、3日後から、糸球体細胞の増殖がおこり、細胞数は導入前の約2倍に増加したが、細胞外基質は、増生しなかった。やはり蛋白尿を認めた。これらは腎糸球体硬化症のモデルとなり得るものであり、その誘発には、炎症を伴わなくても、growth factorの局所での作用により細胞増殖と細胞外基質の増加がその一因であることを示している。 一方、ラットの頸動脈に、内皮をバルーンで障害後、HVJ-リポソームにより遺伝子を導入すると50〜100%の血管平滑筋細胞に遺伝子の発現を約2週間にわたって認めた。この方法で血圧の調節因子であるレニンやアンジオテンシン変換酵素の遺伝子の導入により血管平滑筋細胞の増殖を認めた。この増殖の抑制はb-FGFのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入で阻害された。一方、血管壁細胞の増殖による血管の狭窄を阻止するために、私達は、細胞分裂に関わる細胞周期調節遺伝子をアンチセンスオリゴヌクレオチドで抑制しようと試み、cdc2 kinaseとPCNAのアンチセンスオリゴをバルーン障害後の血管壁細胞にHVJ-リポソームで導入し、約2週間にわたって血管平滑筋細胞の増殖を完全に抑制した。この抑制効果はさらに8週間持続した。このことは、血管の狭窄に対する遺伝子治療が可能であることを示しており、心筋梗塞の予防、治療にもつながるものとして期待させる。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)