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¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 1993: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
本研究では,「感性情報」を,われわれが行動空間から抽出する意味の多様性を生じさせる種々の情報ととらえ,感性情報処理の指標としての事象関連電位(ERP)の可能性を探った。具体的には,刺激として,右方向(0°,→)から上方向(90°,↑)までを10°ずつに区切った10種類の矢印を呈示し,被験者(21-25歳の右手利き成人10名)にはその方向(0-40°を「右」,50-90°を「上」と定義)を判断し,キーを押して反応するよう求めた。課題遂行中の脳波を記録し,加算平均処理によって刺激条件別にERP波形を得た。 刺激の曖昧さ(典型的な右または上矢印からの角度のズレ)が増加するにつれ,方向判断に要する時間は延長した。pzで記録されたERPのP300成分の頂点潜時と頂点振幅を分析した結果,刺激の曖昧さが増加するとともにP300振幅は減少したが,潜時には刺激による違いが認められなかった。P300の潜時・振幅が反映するとされる心理学的過程を考慮すると,本研究における反応時間の遅延は,方向そのものに関する情報抽出時間の遅れではなく,抽出された情報についての確信度が反応の生成や実行の段階に及ぼす影響に起因すると考えることができる。 刺激に関する同一の変数が,P300の潜時と振幅の振る舞いの違いを引き起こし,刺激の曖昧さが効果を生じる処理段階を特定できたことは,最終的な判断には現れてこない感性情報の影響を調べる際の指標としてのERPの可能性を示していると思われる。なお,本研究では,全刺激条件でかなり大きなP300が出現したため,その他のERP成分については十分な検討ができなかった。刺激の曖昧さが,それらの諸成分や,意味情報の処理を反映するとされるN400成分に及ぼす影響について検討するための実験を,現在継続している。
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