Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 1993: ¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
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Research Abstract |
本研究は,生体組織の力学的適応現象を解明するための最適な研究対象のひとつとして,歯科矯正における歯槽骨の適応変形に着目し,(1)歯根部応力と歯槽骨吸収量を推定できる新たな解析手法を用いて,患者実測データを基に,歯牙移動現象の基本量である歯根部応力と歯槽骨吸収速度の定量的対応関係を明らかにする,(2)破骨細胞分布を観察する組織学的研究に,上記の手法を導入し,応力と骨吸収の因果関係を細胞レベルで解析する,(3)これらの関係より,生体の力学的適応現象を体系化するための基礎資料を得ることを目的とする.本年度は,以下の成果を得た. 1.歯槽骨適応変形に関する計測法として,患者実測データを基に歯根部における歯槽骨吸収量と応力分布を推定する手法を考案し,本手法により単位応力当りの適応変形速度を求めた.個人差はあるものの応力と歯槽骨吸収量はよい相関を示し,5〜20μm/g・mm^2・dayという推定値を得ることができた. 2.実験動物(ネコ)の犬歯に初期荷重100gを与え,2週間の牽引の後,歯根組織切片を作成して,破骨細胞の分布領域を観察した.次に,各切片の歯根部形状に基づき個体別の有限要素モデルを作成し,応力分布の解析結果を細胞分布の観察結果と比較した.両者の間には比較的明確な対応関係が見られ,破骨細胞は限られた応力範囲で出現することが明らかになった.この結果は,適当な大きさの応力が生じ,かつ血流が存在する歯根膜・歯槽壁領域で,破骨細胞が誘導されることを示唆するものであり,至適矯正力や骨の力学的適応現象を解析する上で,極めて有用な知見と考えられる.
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