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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1993: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
Break JunctionによるYBCO多結晶(T_c=87K)の微分コンダクタンスdI/dVの測定によりフェルミ面で完全に開いたギャップ構造を観測した。このギャップ構造は単純なBCSトンネル状態密度に比べるとブロードであり電子対の波動関数は異方的s波であることを示唆している。超伝導エネルギーギャップの最大値はΔ_<max>=35meVであった。またこの値を持つdI/dVでは,ギャップ内平坦部のエネルギー幅(ギャップの最小値)はΔ_<min>=15meVであった。このようなs波的対状態を示す平坦なギャップ内構造はYBCOにおいては再現性良く観測される。このs波的ギャップ構造が帯電効果によるクーロン閉塞などの外因的な効果によるもので無いことを確かめるためにYBa_2Cu_<2.97>Zn_<0.03>O_<7-y>(T_c=77-7OK)による測定も行ったが,YBCOで見られたようなs波的なギャップ構造は全く得られていない。超伝導ギャップであることをより直接的に示すにはその温度変化を追うことが必要であるが,これは成功しておらず現在装置の改良中である。d波の対称性を持つことが実験的に強く示唆されているBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+y>については単結晶による測定を行い,Δ_<max>=35meVを得た。また,完全に開いたギャップ構造の存在を確認したが,ギャップの最小値はΔ_<min>=8meVでありYBCO(Δ_<min>=15meV)の約1/2である。従ってBSCCO単結晶のギャップ構造はYBCO多結晶に比べてブロードであることが判る。これは異方性の違いに起因すると考えられる。得られたギャップの値から,その平均値Δ_o及び分布Δ'を求めると,YBCOでΔ_o=25meV,Δ'=10meV,BSCCOではΔ_o=21.5meV,Δ'=13.5meVとなった。このΔ_oはこれらの物質で報告されている平均的な値にほぼ等しく2Δ_o/k_BT_c=6-7程度である。更にYBCOトンネル接合において再現性の高いフォノン構造を見いだした。これは中性子非弾性散乱によるフォノン状態密度スペクトルによく一致する。これはこの物質における強い電子-フォノン相互作用の現れである。このフォノン構造の強さから電子フォノン結合定数λを見積ると約1.5となり,YBCOのT_c=87K(λ〜2.2)を説明するには充分でないことが判った。これは未知の超伝導機構の関与を示唆する。
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