Research Abstract |
CO_2の転換方法として,電気化学的,光化学的あるいは高温触媒プロセスが提案されているが,そのプロセスに必要なエネルギー,還元剤,生成物の付加価値などを考慮する常温・常圧で進行する電気化学方法が最も有力である。しかし,この方法の欠点は大きな過電圧を必要とすることと反応速度が遅いことである。この点を克服する鍵は電極触媒の開発にある。本研究では,この目的に沿った電極触媒系を開発するために,異なる機能を有する膜を二重に修飾した電極あるいはその膜に金属錯体または活性配位子を固定した電極を用いてCO_2の接触電気化学的還元を試みた。電極系は,不活性金属/第1膜/第2膜(金属錯体または配位子を包含)/溶液から成る。第1膜は,プロトンを容易に還元し(水素過電圧が小さく),活性な水素原子を発生するプルッシアンブルー(PB)やモリブデンブルー(MB)である。第2膜は,CO_2捕捉あるいはCO_2拡散の可能な導電性高分子膜,ポリメチルピロール(PPy),ポリアニリン(PAn)などである。第2膜には,金属錯体や配位子を取り込ませ,その機能を一層高めた。 PPy/MB/Pt電極を用いてCO_2を長時間電解還元したところ,還元生成物としてメタノール,エタノール,乳酸,アセトアルデヒド,アセトンがえられた。特に,乳酸の選択性が大きく,80%以上であった。CO_2還元の電流効率は最高で約40%であった。還元生成物は主として溶液と修飾膜中から検出された。反応後の修飾膜のFTIRスペクトルを測定したところ,-CHO,-COOH,-CHOH,-CO-,-OH,の存在が確認され,CO_2の還元生成物や反応中間体の膜への吸着が認められた。還元生成物の収率と選択率は修飾膜と膜に固定された金属錯体や配分子の種類に大きく依存した。還元機構としては,活性水素によるCO_2の段階的水素化が提案された。
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