Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1993: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
これまでに有機ラジカルMOTMPとAOTMPの両結晶の極低温熱容量測定を行い,MOTMPについては140mKに,AOTMPについては650mKにスピン配向の秩序化に基づく磁気相転移を見出した。前者には強磁性的,後者には反強磁性的相互作用が強い1次元性の経路が存在することを明らかにした。この1次元鎖の存在は,その後の磁気測定でも支持されている。 今年度は類似の分子構造を有する有機ラジカルMATMPについて極低温熱容量測定を行った。MATMPはMOTMPのエステル結合をアミド結合に変えた分子磁性体である。150mKに磁気相転移に基づく熱容量のピークを見出し,相転移温度の高温側に,短距離秩序に基づくなだらかな熱異常を観測した。この熱異常は強磁的相互作用をするスピン1/2の1次元ハイゼンベルク鎖に起因することを明らかにした。 さらに相転移の低温側をスピン波(マグノン)理論により解析し,MOTMPとMATMPの場合はスピンの3次元長距離秩序は強磁性的であり,AOTMPでは反強磁性体であること見出した。 異核金属イオンから成るフェリ磁性1次元鎖を束ねて自発磁化を有する分子磁性体を設計する戦略がKahnらにより提案された。Mn^<2+>(スピンS=5/2)とCu^<2+>(S=1/2)が1次元的に交互に配置した異核金属錯体MnCu(obbz)・5H_2Oは2.3K以下で反強磁性体となる。ところが5水和物の部分脱水で得たMnCu(obbz)・1H_2Oは14K以下で自発磁化を有することが報告され,大きな注目を集めた。5水和物では2.17Kに鋭い磁気相転移を見出した。分子構造を反映し,転移点の高温側に1次元鎖に特徴的な短距離秩序に基づく熱異常が観測された。 ところが1水和物の方は14Kに相転移を示さず,18K付近に最大値を有するなだらかな熱異常のみが観測された。超常磁性の可能性も含め目下検討中である。
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