Research Abstract |
群や等質空間の解析における球函数の特徴付けは様々な方法でなされ得るがそのひとつに微分方程式によるものがある.その微分方程式系はa)変数の個数分の可換な微分作用素からなり,また同時にb)その群や等質空間のWeyl群の変換に対し不変である.このような性質を持つ線型の微分方程式は当然球函数のみたす微分方程式に一般化と思え,既に1970年代に関口次郎,続いて橋爪道彦,オランダ学派のこの見方による研究がある.1993年,大島利雄は関口英子との論文の中でこのような函数系「全体」に着目することを提唱した.すなわちa)b)の性質を持つ微分方程式の分類がいくつかの条件の下で可能であることを示した. 本研究はランク2の(即ち2変数の)微分方程式系に対し上の研究を拡張したものと位置づけられる.問題の性質上ランクが上がれば可換という条件がきつくなりa)b)の条件を満足する系は少なくなる.実際ランクが2の場合にはもっとも条件がゆるくそのため例えばB_2型の場合には今まで見つかっていない可積分系が構成できることがわかった.さらにこれを手がかりに上で古典型ルート系のうち唯一分類ができていなかったB_2型の場合の分類が大島利雄との共同研究によって完成した[2].結果として,得られる方程式系は楕円函数(Weierstrassの〓函数)及びその周期が退化した場合の三角函数または有理函数で表示される.このことの理由のわかる証明や他の特にYang-Baxter方程式の解の分類との類似や関係を調べることは今後の課題である. また半単純リー群の無限次元表現の指標に関する研究では、旗多様体上の幾何的な対象と表現を結び付ける柏原の予想を解決した[1].群より一般に特別な等質空間(特に対称空間)についてもその幾何的な部分に対して現在研究が進行中である.
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