Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1993: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
運動を伴う感覚統合過程の可塑性と学習機能に関しては,従来心理学において反転眼鏡等による適応実験に代表される残効現象などによって多くの研究がなされているが,本来,運動を伴う空間的な知覚を成立させるためには,視覚や四肢の自己受容感覚のみならず自分自身の位置や姿勢といったものを常時反映させる必要がある.生理学的には脳内においてこうした各種感覚器からの入力が常時統合されている部位としては頭頂連合野が挙げられており,上頭頂小葉の破壊により運動性の位置知覚,下頭頂小葉の破壊により視覚性の位置知覚の統合が,阻害される傾向が知られている.この知見から,脳における位置の感覚統合においては各感覚座標系から他の座標系への一方向性の変換機構が独立に存在する可能性が示唆される.そこで,本研究の初年度にあたる今年度は,この視覚性到達実験をもとに能動的知覚過程の基礎となる空間位置知覚において視覚と上肢固有受容感覚の静的な位置知覚の統合過程の独立性を,被験者を用いた心理物理実験によって検証した.まず,上肢位置のビジュアルフィードバック無しの条件下で上記実験と同様の視覚性到達実験を行ったところ,上肢先端の到達点は奥行方向へのアンダーシュートの傾向を示した.この実験に対し,位置の調節対象を入れ替えた課題である固有受容感覚性のターゲットに対して注視点を定位する実験を考えた場合,同一の感覚統合過程によれば注視の定位点は逆のオーバーシュート傾向を示すものと予想されるが,実際にはアンダーシュート傾向を示す.これらの実験結果から,2つの実験課題において用いられた感覚統合過程は自覚的には同一の感覚統合でありながら異なる処理系によって達成されているものと考えられる.
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