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¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 1993: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Research Abstract |
T-リンパ球はその成熟,分化の種々の過程で死滅する。即ち,自己の抗原に反応するT-細胞や機能し得ないT-細胞受容体を発現する細胞など90%以上の前駆細胞は胸腺で死滅し,また成熟細胞も自己抗原と反応する細胞や一旦活性化された細胞は末梢において死滅する。Fasは,TNF/NGF受容体群に属するタイプI膜タンパク質であり,アポトーシスのシグナルを伝達する。私達はこれまでに,マウスのlpr(lymphoproliferation)はFas遺伝子の変異であることを示した。lprマウスは,異常T-細胞が蓄積し自己免疫疾患の症状を示すことから,FasはT細胞の成熟過程,特にその死の過程に関与していると考えられた。本研究ではマウスFas染色体遺伝子を単離し,Fas遺伝子は70kb以上から成り9コのエクソンにより構成されていることを示した。そしてlprマウスのFas遺伝子の構造の解析から,このマウスでは内存性レトロウイルスの一種,ETn(early transposable element)がイントロン2に挿入されていることが示された。ETnの両端にはpoly(A)シグナルを持つLTR(long terminal repeat)が存在し,これによりFasの転写はイントロン2で終結し,正常なFas mRNAは殆ど発現されていなかった。一方,マウスFasを大量に構成的に発現する細胞株を抗原としてハムスターを免疫し,その脾臓細胞より,マウスFasに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株を樹立した。そして,この抗体を用いてマウス胸腺細胞を染色したところ,CD4^-CD8^-胸腺細胞を除き,CD4^+CD8^+,CD4^+CD8^-,CD4^-CD8^+細胞でFasの発現が認められた。一方、lprマウスではどの胸腺細胞でもFasの発現は認められなかった。しかし,その胸腺細胞の成熟過程は一見正常であった。lprマウスは自己免疫疾患を呈することから,FasがT-リンパ球やB-リンパ球の成熟段階に関与していることは確実であるが,どの過程に関与しているかは今後の課題である。
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