Research Abstract |
糖尿病の指標として現在用いられている1,5-アンヒドログルチトールの酵素的測定法の問題点は,試料中に共存する高濃度のグルコースを除去するためにミニカラムによる前処理を必要とするので煩雑でありまた長時間を要し,自動分析することが不可能な点である.本研究で私達はミニカラムを使用することなく直接酵素反応による前処理反応でグルコースを消去し,そのまま次の呈色反応に持ち込む測定法を考案し,実用化のための検討を行った. まず,試料として1000mg/dlのグルコースを含む1,5-アンヒドログルチトール溶液を試料として実験を行った.前処理反応には私達が特許申請したグルコキナーゼ,グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ,グルタミン酸デヒドロゲナーゼ反応を用いて試料中のグルコースを直接消去し,続く1,5-アンヒドログルチトールの呈色反応には薮内らが特許申請したピラノースオキシダーゼ反応で1,5-アンヒドログルチトール過酸化水素を生じさせ,それをペルオキシダーゼ反応で高感度に呈色させるために色原体DA-64化を選んだ.分析器としては応用範囲の広いシングルマルチ方式である日立7070型自動分析装置を用いて自動分析を行った.前処理反応5分以内に共存するグルコースは完全に消失し,呈色反応を5分間進行させ,計10分で高精度,高感度に1,5-アンヒドログルチトールの自動分析を行う方法を確立した. 次いで血清を試料として実験を行った.ところが,高感度色原体DA-64は,血清中のタンパク質と相互作用をおこして呈色を妨害するため使用できないことがわかったので,再び色原体の検討を行いHTIBを選択した.HTIBを使用して他の条件はそのままで実験を行ったところ,血清を試料とする場合にはグルコースの消失速度が遅く,1000mg/dlのグルコースを添加した血清では,5分の前処理反応後も約20μg/mlの1,5-アンヒドログルチトールに相当するグルコースが残存することがわかった.そのため,各試薬成分の濃度について詳細に再検討を行い,現段階では残存グルコースを数μg/mlにまで減少させることができたところである.この程度であれば実用は可能と考えられるので,今後は健常者,糖尿病患者の血清を用いて本測定法の性能に関する成績をまとめる予定である.
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