Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1993: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本研究では,幼児の愛他行動に随伴する快感情として,援助者の快感情に対する共感(共感的快)と援助前の共感的心痛の低減による快感情の2種類が存在し,それらの快感情が幼児の愛他的行動傾向を高めるだろうという作業仮説が設定された。そして,愛他行動に伴う2種類の快感情の測定とそれらの特徴の分析を目的とした実験(実験1)と,共感的快が他の場面での共感傾向および他者の感情予期傾向に及ぼす影響の検討を目的とした実験(実験2)の2つの実証的研究が行われた。 実験1では,5歳児64名に援助を描いた紙芝居が提示され,彼らの物語主人公への感情の分析を通して,苦境場面に対する共感(共感的心痛),援助場面での共感(共感的快)および援助場面での自己の快感情が測定された。自己の快感情と共感的快との相関係数は.65(p<.01),共感的心痛と共感的快との相関係数は.22(p<.08),共感的心痛と自己の快感情との相関係数は.57(p<.01)であった。自己の快感情と共感的快とは有意に関係しているものの同一ではないことが確認された。また,共感的心痛を経験した者はそうでない者より共感的快と自己の快感情の得点が有意に高かった。これらの結果から,愛他行動後には共感的心痛の低減に伴う自己の快感情と援助場面での共感的快による快感情の2つの快感情が存在すると結論された。 実験2では,5歳児64名を対象に,共感的快の経験が他の場面での共感傾向および愛他的感情予期傾向に与える影響が検討された。共感的快を誘発する物語を提示された幼児は他の幼児よりも,他の物語の主人公の感情に共感的に反応する傾向が有意に高く,また援助もしくは非援助が他者に与える感情的影響について愛他的に推測する傾向が有意に高いことが見出された。 今後,共感的快によって高められた共感と感情予期傾向が実際の愛他行動にどのような影響を与えるかについて検討する必要がある。
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