古代ギリシアにおける神話的世界の社会関係に関する法制史的総合研究
Project/Area Number |
05620002
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Fundamental law
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
葛西 康徳 新潟大学, 法学部, 教授 (80114437)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1993: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | ギリシア神話 / 神託 / ギリシア悲劇 / ホメロス / ドロス(企み) / 社会関係 / 紛争解決 / ヘロドトス |
Research Abstract |
申請計画書に示した三つの論点に関して、現時点での研究結果を報告する。 第一に、現在神話学をリードしているフランス構造主義の方法論に基づく業績のうち本研究との関連で重要な点は、神々の能力ないし行動様式の一つとして、metis(cunning intelligence)ないしその一種であるdolos(企み)が強調される点と、(アテナイ)市民対非市民一般の対立モデルを用いてギリシア悲劇の神話解釈を行う点である。前者は、本研究で明らかになったホメロスにおける神々による紛争解決ないし対立回避の手段としてのdolosの重要性と結果的には一致するが、彼らの分析ではかかるmetisないしdolosが必要とされる理由が明確ではない。一方、後者に関して、神話解釈モデルとしての市民-非市民対立モデルは一面的で、むしろ錯綜した種々の社会関係モデルと神話構造が相互に影響しあっている。この点は、昨夏申請者が出席したロンドンでの「ギリシア悲劇」国際学会でも指摘された(例、John Gouldの一連の論考、実績報告書参照)。 ここから第二に、神々の社会関係を相互のオブリゲーションによる結合として分析する方法は極めて有効であることが明らかになる。何故なら、dolosないしmetisが重要な理由は、意外にも神々の社会の方が人間社会よりもヒエラルキーが明確で、dolosはかかる階層的秩序が混乱し、対立状況に陥った際、暴力以外の解決方法とし正当化されるからであり、他方、市民以外の、女性、外人、子供等の錯綜した社会関係がむしろヘロドトスやギリシア悲劇では主要な役割を演じており、彼らとの特殊な結び付きにより神々の行動が規定されている 第三の、神託解釈の問題は現在検討中であるが、幸い申請者は平成6年2月現在古典学の中心地オクスフォド(クライスト・チャーチ)にて海外研修中であり、この絶好の環境を活用して成果を公表したい。
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Report
(1 results)
Research Products
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