Research Abstract |
海嶺の衝突・沈み込みは様々な影響を及ぼしたと考えられるが,そのもっとも直接的な効果は,海溝を充填していた未固結堆積岩中への海嶺玄武岩の噴出・貫入である.本研究では,深海底の未固結堆積岩中へ玄武岩マグマが噴出・貫入した場合にどのような相互作用や反応が生じるかを解明することを目的とした. 堆積岩と玄武岩類との接触関係が良く観察される日高帯の下川オフィオライトとトムラウシ岩体とで野外での産状について検討した結果,ドレライトのシートとの接触部に向かって黒色泥岩が漸移的に優白化している現象が普遍的に生じていることが明かとなった.黒色頁岩から接触部の優白化している部分までの連続的な岩石資料を採取し,全岩主化学組成・微量成分組成分析を実施した.その結果,接触部へ向かってK,Rbが急激に減少すること,逆にSi,Caが大幅に増大すること,Fe,Mgもわずかに増大することが明かとなった.一方,ドレライトにおいてはより変質が進行した岩石では,H_2O,K,Rbが著しく増大すること,逆にCaが著しく減少する.つまり,黒色頁岩における組成変化とドレライトにおける組成変化は相帆的となっていることが明かとなった.また,黒色頁岩における組成変化は接触しているドレライトの規模と接触部からの距離とによってコントロールされている.つまり,ドレライトの規模が大きくなるほど,組成変化している巾はより広くなり,また,接触部に近いほど著しく組成変化している.一方,ドレライトにおける変質と組成変化は,単純に接触部からの距離によっているのではなく,冷却・固結時のクラックぞいに沿って進行しているらしいことが明かとなった.以上のことから,大量の海水を含んでいる未固結堆積岩中へ熱い玄武岩マグマが貫入すると,大量の熱水が発生し,堆積岩と玄武岩との間には熱水を媒介とした化学成分の移動や相互反応が生じたと考えられる.
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