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¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1993: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
側鎖に芳香族基を有する高分子化合物の光電導素過程を,ピコ秒からミリ秒にわたる広範囲の時間領域で測定し,光誘起電荷分離に引き続く非常に迅速なホール移動(電子シフト過程)といった電子移動反応の観点から検討した. まず,典型的な側鎖に芳香族基を持つ高分子化合物であるポリ(N-ビニルカルバゾール)を中心に,フィルム系や溶液また固体吸着系で,購入した光学部品を用いて,ピコ秒領域の過渡吸収の二色性を測定する事により直接的にホール移動の速度定数を決定した.その結果,系に依存してホール移動は数十ピコ秒から数ナノ秒に1回程度の頻度で起こり,ポーラスガラスのような固体吸着系で最も迅速であることが見いだされた.一方,再結合過程は吸着系においても特異的な挙動は観測されなかった.すなわち,再結合過程には系の状態は平均的な誘電体として作用するが,ホール移動は微環境に敏感な過程であり,電荷分離・再結合・電荷シフトといった反応の種類ごとに異なる取扱いが必要と考えられる結果が得られた.このようにホール移動によって対間距離が長くなったイオン種の再結合過程を,より長い時間領域まで過渡吸収・蛍光の時間変化を観測し検討した.現在までのところ,フィルム中では,マイクロ秒からミリ秒でも観測される電荷分離状態の蛍光は,過渡吸収の時間微分として表される結果が得られている.吸収は全ての電荷分離種を観測しているのに対して,蛍光はアニオン・カチオンが近接した状態からしか発光せず,これが単位時間当たりに再結合する確率に比例したものとすると,上述のように蛍光の時間変化は,過渡吸収の時間微分として表される.すなわち,主たる再結合過程には,またホールが近接した位置にもどる過程で起こり,長距離電子移動過程はあまり起こっていないと考えられた.一方,吸着した系では,逆に長距離トンネリングによる電荷再結合が効率よく起こっており,この場合にも特異的な結果が得られた.これらの結果に基き,より広範囲の吸着系や温度効果についても研究を行っている.
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