Research Abstract |
溶液中で電気化学的手法により生成させた種々の酸化状態をとる電子移動反応中間体の構造と電子状態を決定するために,シンクトロン放射光を用いた蛍光XAFS法とin situ電気化学セルを組み合わせた装置を開発した。また,この装置を用いて,光化学系IIモデルであるマンガンシッフ塩基錯体のアセトニトリル溶液(マンガンイオン濃度は1〜3mM,M=mol dm^<-3>)について,Mn K吸収端におけるXANESおよびEXAFSスペクトルを室温で測定した。また,比較のために同錯体の結晶状態のスペクトルを測定した。マンガンモデル錯体は,Mn-salen系の単核および二核錯体であるMn(salen)Cl,Mn(salpn)cl,[Mn_2(bpy)_2O]_2(ClO_4)_3を測定した。電気化学セルを用いて,単核錯体はMn(III),Mn(IV)状態,二核錯体はMn(III,III),Mn(III,IV),Mn(IV,IV)状態を生成させた。XANESスペクトルの形状は,溶液および結晶状態で同じであり,溶液中のマンガン錯体の配位構造は結晶中のものに似ていることを示唆した。しかしながら,XANESスペクトルの吸収端エネルギーおよび形状は,マンガン錯体の酸化数と多核状態に大きな依存性を示した。EXAFSスペクトルの解析から,マンガンイオンの配位構造を決定した。Mn-O/N結合距離は1.83〜1.92Aである。また,単核マンガン錯体では,塩化物イオンがマンガンイオンに結合しており,Mn-Cl距離は2.22〜2.32Aである。この塩化物イオンの配位は,高酸化状態のマンガンイオンの安定化に寄与していると考察した。二核錯体中のMn...Mn距離は,Mn(III,III)錯体では2.82A,Mn(IV,III)錯体では2.75A,Mn(IV,IV)錯体では2.71Aであった。本研究の結果と,光化学系IIで報告されたMn...Mn距離2.73Aとの比較から,光化学系II中のマンガンイオンの酸化数はIII価とIV価であると結論された。
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