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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1993: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
気候変動との関係で広域かつ1ヶ月程度の期間での降水量の実態把握には,衛星による観測が不可欠であるが,衛星観測に固有の時・空間サンプリングに伴う精度を事前に評価しておく必要がある.そのためにまず,衛星軌道に関するBrooksの方程式系から衛星の高度,軌道傾斜角,衛星の初期位置および時刻を与えることによって,任意の時刻における衛星の位置,観測される範囲が計算できるプロセスをプログラムとともに展開した.一方,観測領域内での観測期間の真の平均とその領域・期間の衛星の時・空間サンプリングにより得られる標本平均の期待標準偏差を領域・期間平均値で除したもの衛星観測の取得情報の精度と定義し,これを求めるのに降水時系列の確率構造を利用する方法を展開した.その方法は起動高度,軌道傾斜角から一義的に決まるカバー率と降雨時系列の変動係数,コレログラムの減衰定数が与えられれば評価精度が直ちに計算されるというものである.以上の展開をTRMM衛星軌道を想定し,観測領域を近畿の深山レーダサイトを中心とする200km*200kmの範囲に設定して7月1ヶ月間の精度を査定したところ約27であった.一方,時・空間的に密でないデータしか利用できない地域への本方法の拡張についても展開し,中国ゴビ砂漠への適用では40〜60%の評価精度であった.こうした結果は海洋性の降雨についての7〜10%という評価精度に比べると悪く,陸域の降雨現象の時・空間的変動の大きさを意味していよう. さらに本研究では,降雨現象のもつ確率的性質を時間的にも空間的にも再現することのできる降雨場モデルを構築し,その多数回のシミュレーションを実現象の地上データと考え,それを用いて同様に衛星観測による評価精度を求める方法も展開している.降雨場モデルは空間相関を保存する形でのランダムフィールドの発生,レインバンド・レインセルの発生などを含むより物理的側面も考慮した降雨の時・空間確率構造モデルであり,その展開は今後とも改善していくことにより,衛星観測による評価精度の算定がより一般的になるものと期待される.
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