Research Abstract |
本研究は,無機化合物粉体の表面に遷移金属をコーティングする方法を開発し,無機化合物粉体と金属との結合状態を明らかにするとともに,電気特性,磁気特性,焼結特性などの諸特性を調べ,無機化合物粉体の高性能化や機能化を図ることを目的として行ったもので,無機化合物粉体としては,球形のアルミナ,薄片状の雲母,繊維状の炭酸カルシウムを,遷移金属としては,ニッケルやコバルトなどの第1遷移系列の金属を対象とした。 その結果,これらの無機化合物粉体を,ニッケルやコバルトなどのアセチルアセトナト錯体と還元剤(ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウム)とを含む有機溶媒(アニソールおよびジフェニルエーテル)中で加熱環流することによって,目的とする金属被覆無機化合物粉体を得ることができた。 得られた金属被覆無機化合物粉体について各種の分析を行った結果,析出金属の最表面はその金属の酸化物で覆われているが,その層は非常に薄く,内部は金属であることがわかった。また,粉体表面に析出する金属の粒子径は,還元剤の種類によって異なり,水素化ホウ素ナトリウムを使用すると,超微粒子状の金属が析出した。 これらの金属被覆無機化合物粉体の電気特性,磁気特性および焼結特性などを調べた結果,機能性無機材料として使用できることがわかった。特に,電気特性と焼結特性は優れていた。また,ニッケル被覆アルミナ粉体について,溶射材料としての適合性を詳細に調べた結果,磨耗性,熱衝撃性,じん性に著しい向上がみられ,セラミックス溶射皮膜の欠点ともいえるこれらの性能が著しく改善された。 今後は,金属の析出過程や無機粉体と金属との結合状態,および無機化合物粉体の粒子径の影響などをより詳しく調べる。
|