Research Abstract |
リン酸塩には鎖状物および環状物がある.鎖状リン酸塩にはないコンパクトで大きなマイナス電荷をもった多価電解質として,環状リン酸塩は食品関係をはじめ医薬品・生体材料分野等に役立つことが期待できる.そこで環状物生成過程での雰囲気や水蒸気の影響を詳細に調べる事により,環状物質を容易に,しかも高純度に供給する事が可能になる.現在,環状リン酸塩の熱分解過程をTG-DTA装置や電気炉を用いてダイナミックおよびアイソサーマルな条件で検討している.これに真空定温乾燥器を用いる事により,分解を抑えてより低温で結晶水等を取り除くことが可能になり,正確に水蒸気の影響が評価でき,熱分解反応過程がより明確に解明される. 今年度既に「種々の環状リン酸(P4m,P6m,P8m)の銅塩の熱挙動」を検討し,P4m,P6m,およびP8mは開環の後,P1やP2の短鎖状リン酸塩になり,その後縮合してPoligoやPhigh polyの長鎖状リン酸塩に変化し,一部新たに新規のP4mも生成した.各々のリン酸塩の開環の際,水蒸気の影響が大きく現われ,開環が促進された一方,その後の縮合に関しては抑制された.また,「アルカリ土類金属の環状リン酸塩の合成とその熱分解」および「希土類リン酸塩の合成とその物性」のテーマでも検討し,前者から,1)開環および縮合の際の水蒸気の存在が大きく熱挙動に影響すること,2)結晶水の中にも環境が異なるものがあること,後者からは,1)La,Pr,およびNdの熱挙動は類似している,2)Ceでは酸化が起こりP2が安定に存在し,その後還元され,P3mを経てP1が生成すること等がわかった.今後,超伝導物質をはじめ多くの機能性材料の構成元素である希土類元素の環状リン酸塩の熱挙動を,雰囲気を変化(空気中,真空中および不活性ガス中等)させることにより研究し,加熱生成物との相関について調べた後,希土類元素のもつ多くの特異性を比較研究する予定である.
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