Research Abstract |
近年,インプラントが長期間にわたって良好な機能を発揮するためには,直接的骨界面,いわゆるオッセオインテグレーションが優れているとする考え方が普遍的になりつつある。今回我々は,インプラント材料表面に骨芽細胞を実験的に付着させることにより,より早期に,より確実に生物学的骨反応を誘発させ,直接的骨界面を達成できることに着想し,以下の実験を行い,その可能性を検討した。 すなわち,Maniatopoulosら(1988)の方法に従い,採取したラット骨髄由来の骨芽細胞を培養後,4種のインプラント材料(チタン合金,ジルコニア,合成ハイドロキシアパタイト,生体ガラス)にこれら細胞を付着させ,それらの材料(実験材料)をラット頭頂骨骨膜下に埋入し,同材料に対する組織の反応を検討した。併せて,骨芽細胞を付着させていない材料(対照材料)に対しても同様の検討を行った。 その結果,いずれの実験材料および対照材料周囲組織に炎症性反応はほとんど認められなかったが,皮膚並びに骨膜の張力の影響と思われる一部の骨吸収が材料に接する母床骨表面に認められた。各種実験材料に対する組織反応については,材料間に大きな差異は認められなかったが,合成ハイドロキシアパタイトおよび生体ガラス周囲の実験的に骨芽細胞を付着させた面においては,一層の硬組織の添加が観察され,その範囲は他の2種の材料に比較してより広く認められた。一方,対照材料においては,いずれの周囲においても硬組織の添加はまったく認められず,骨膜を構成する軟組織により被覆されていた。これらのことより,今回実験に用いた各種インプラント材料は組織に良く許容されていること。また,より早期に材料表面に硬組織の添加を図り骨組織との親和性を高めて骨接触を確実に得るためには,骨芽細胞を付着させた材料が有利であることが明らかとなった。
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