Research Abstract |
不正咬合の治療に歯の移動を必要とする歯科矯正の分野では,歯の移動にともなう歯槽骨の改造機転,歯根吸収の機序の解明は重要である.一方近年,in situハイブリダイゼイション法が単一の細胞レベルで遺伝子発現を検討するための強力な手段となってきた.これは種々の異なる細胞が混在する組織の中で目的とする遺伝子がどの種類のどの時期の細胞で発現されているか局在できる.そこで,本研究では,矯正的歯の移動時の歯槽骨における骨基質蛋白遺伝子のin situハイブリダイゼイションを行った. 矯正的歯の移動時の歯周組織の骨基質蛋白遺伝子のin situハイブリダイゼーション- 7週齢Wistar系ラットの上顎第一臼歯と第二臼歯の歯間部に矯正用ゴムを挿入し,実験的歯の移動をおこなった.反対側は対照とした.歯の移動0,1,3,5,7日目にラットを屠殺し上顎骨を切り出し,4%パラホルムアルデヒド-PBSで固定し,10%EDTA-PBSで脱灰後,脱水し,パラフィンに包埋した.試料を5μmに薄切し,パラフィン除去後,前処置を施し,脱水後ハイブリダイゼイションを行った.プローブは,骨基質蛋白遺伝子としてbone Gla protein,(Osteocalcin),osteonectin,matrix Gla protein,osteopontin(2ar)のcDNAを用いてこれらのDIG RNAプローブを作成した.ハイブリダイゼイション後,抗体反応,発色反応をモイスチャーチャンバーの中で行った.その後,封入し,組織顕微鏡により歯の移動に伴う圧迫側と牽引側の皮質骨,歯槽中隔の海綿骨,象牙質およびセメント質の歯根吸収像を観察し,osteocalcin,osteonectin,osteopontin等の骨基質蛋白遺伝子発現の細胞局在を明らかにした.特にosteonectin遺伝子の発現については歯根膜の非特異的なシグナル発現を生じないハイブリダイゼイション条件を見いだすことに努力した.このように歯の移動における,これら遺伝子発現の経時的変動を検討し,歯の移動,歯根吸収のメカニズムを分子レベルで解明するとともに,骨組織における骨基質蛋白質の役割を明確にできた.これらの知見をJ Histochem Cytochemに投稿し印刷中である.さらにJ Dent Res,J Bone Min Resに投稿準備中である.
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