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¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1993: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
最終氷期最盛期以降に陸上における降雪量の変遷.および,晩氷期以降の自然環境の変遷を関する基礎資料を得る目的で,近畿地方から中国山地にかけての日本海側多雪山地に分布する泥炭地を中心に取り上げ,泥炭層の堆積開始時期および泥炭層の分解度の変化などについて検討した. 1).丹後半島大フケ湿原(高度540m)では,深さ約5mの泥炭層基底部から約16000年前の^<14>C年代値が得られ,その南隣りの放棄水田では,深さ約5m付近まで泥炭層が連続しており,深さ4.3m付近にAT火山灰,深さ約1mにAh火山灰が存在する.泥炭層は,いずれも,地滑り起源の頂部凹地に堆積したものである.局地的な地形条件の影響が強いものの,丹後半島では,1万年よりかなり以前から泥炭層は堆積していた. 2).岡山県北部の細池湿原(標高約900m)では,現在まで連続する厚さ約2mの新規泥炭層の堆積開始期は約12000年前,ヒプシサーマル期以降において堆積速度が増す時期は1500-2000年前頃からである. 3).以上のデータは,北アルプスに比べて,泥炭の堆積開始期は若干早いものの,堆積速度の増加期はかなり遅くれたことを示す.中国山地の湿原を数多く調査した三好(1991)によれば,深さ1m付近から6000-9000年前の年代値が得られた湿原が多く,それらでは二葉マツ型花粉はおおまかには深さ50cm前後の層準から急増し,その年代は約1000年前頃である.細池湿原は三好(1991)の結果とほぼ調和的であり,丹後半島でも矛盾しない. 以上から,西日本の多雪山地では,北アルプスに比べて,泥炭層の堆積開始期は早いものの,ヒプシサーマル期以降において泥炭の堆積速度が増加する時期はかなり遅れたことが判明する.前者は北アルプスに比べ降雪量の増加が顕著でなったことが示唆される.
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