Research Abstract |
1.近中心窩視による漢字形態情報の獲得について検討した.プライムを近中心窩に相当する位置に瞬間提示し,その後画面中央に提示されるターゲットの五彙決定を求めるプライミング課題においてプライムとターゲットの形態的関係(同一,偏共通,概形類似,中立,無関連)を操作した.その結果,両者が形態的に関連しているときのターゲットの処理に対する促進効果の分析から,漢字の細部に関する情報は視角5度の範囲からでもある程度は獲得されうること,概形に関する情報は少なくとも8度の範囲までは獲得されうることが示唆された.2.漢字表記語の意味処理を問題とする場合のプライミング課題と刺激材料の妥当性について検討した.プライムとターゲットの意味的関係のタイプとしてカテゴリー名と事例,反対語,連想語の3条件を設定し,質問紙による予備調査によって刺激項目を選択した.さらに,プライムとターゲットの両方を画面中央に提示するプライミング課題においてプライムとターゲットの意味的関係(関連,中立,無関連)を操作した.その結果,プライムとターゲットの意味的関係のタイプによらず,両者が意味的に関連しているときにターゲットの処理が促進される傾向は認められたが,統計的には有意とはならなかった.したがって,本実験の手続きおよび刺激材料をそのまま適用して近中心窩視による意味情報の獲得の問題を扱うことはできない.プライミング課題を用いるためには,時間条件などの手続きや刺激材料についてさらに検討することが必要である.
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