Research Abstract |
本研究の目的は,“子どもが自己の行為を対象化することができるようになるまでに他者から如何なる介入が必要とされるのか"その介入の発達的な変化を幼児期の子どもを対象に,折り紙構成課題を用いて検討することにあった。まず平成4年度科学研究費の課題研究(課題番号04710062)の知見を踏まえて,子どもの折り紙構成行為を促進する介入形態として非常に抽象的なもの(言語化による)から非常に具体的なもの(動作化による)へ,言語・動作の2要因について各2水準を設定した[言語的介入-I操作的言語化,II形象的言語化;動作的介入、III鏡的動作化,IV手取り的動作化]。この4つの介入形態を基準に子どもの構成行為の対象化能力を診断するプログラムを作成・実行し,そのプログラムの妥当性を検証した。次に、このプログラムによって固定された子どもの行為対象化の程度を「足場」にして,子どものより高次な表象レベルでの構成過程を促進・援助し得る実戦的なプログラムを精緻化した。主な結果は次の2点に集約される。1.診断プログラムにより,現在の子どもの行為対象化の水準を診断することは可能であり,その発達過程は大人が子どもの手を取りながら大人主導による動作による構成過程から,子どもが自他の構成モデルを言語レベルで比較・照合可能な(子どもに)内在化された構成過程へ変化する。2.援助プログラムを精緻化するにあたり,実験者からの動作的な介入段階が不可欠な3,4歳時では,IV手取り的動作化で折れる子どもがIII鏡的動作化で折れるまでに,実験者と子どもが構成過程を直接共有できるような動作レベルでの介入段階が必要である。また実験者からの言語的な介入のみで構成過程を展開でき始める5,6歳時にとって,折り図を身近なものに形容する形象的言語化はその適応範囲が簡単な操作に限定され,あらゆる折り紙操作に関して有効な言語化になり得ない,ことなどが問題点として特定化された。
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