Project/Area Number |
05710194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
棚橋 訓 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (50217098)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1993: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | クック諸島 / 伝統文化 / 文化の開発 / 土地称号法廷 / 植民地化 / 近代化 |
Research Abstract |
本研究では、1901年のニュージーランドによるクック諸島の植民地化から、1965年に内政自治権を得て独自の島嶼国家形成を目指す現在までの歴史過程に着目し、その過程で「伝統文化」として意識されるものがいかに政治的・社会的統合規範の再編成と創造に関与してきたのか、更に「伝統文化」と所謂「近代化」の関係を諸島民自身がどのように捉えているのかを分析した。分析結果は以下の様に要約される。 現在、当該社会固有の統合規範として土地権(所有・相続)と称号継承権の問題が諸島民によって頻繁に指摘されるが、実際にはその細則の多くが1901年に植民地支配の根幹として設置された土地称号法廷(Land and Title Court)を通じてヨーロッパ人により制度化されたのものである。限定的な島環境の中で醸成されてきた柔軟な土地権の認識は、法廷での登記と言説を通じて植民地行政を円滑化するための規則に還元・固定され、結果として口頭伝承を基礎とした「伝統文化」は数百冊の土地登記簿と裁判記録によって置換された。ここでは間接統治を前提とする植民地制度が寧ろ積極的に「伝統文化」を客体化し、それを諸島民が在来固有のもの(Tumu Korero Maori)として受容していく過程が認められ、クック諸島の「伝統文化」の一端は植民地化過程そのものにあると指摘される。自治権獲得以降も土地称号法廷は存続し、現在も「伝統に基づく」正統性を島民が主張する場合には法廷記録が最優先の根拠とされる。しかし、近年、経済力と資源に乏しいクック諸島が観光資源としての「伝統文化」を活用して近代化を図ろうとするに及んで、改めて口頭伝承、すなわち「文化について語ること」(vananga)の意味を積極的に問い直す傾向が強まっている。そしてクック諸島の近代化過程においては、経済開発に比定されるように「文化について語ること」が「文化の開発」として認識され、政治的にも重要な行為として位置付けられている。
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