立退料ルールの形成に関する<法文化>的アプローチと<制度>的アプローチの研究
Project/Area Number |
05720005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Fundamental law
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐藤 岩夫 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (80154037)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1993: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 紛争処理基準 / 法分化 / 立退料ルール / 政策 |
Research Abstract |
1.本研究では、借家明渡紛争処理基準としての立退料ルールの形成過程における<法文化>的要因と<制度>的要因の相互作用関係を解明すべく、(i)文献資料調査、(ii)公刊裁判例の統計的調査、(iii)弁護士への聴取り調査、(iv)ドイツを対象とする比較法社会学的検討を行なった。 2.研究の結果明らかとなったのは下記の諸点である。 (1)立退料ルールの淵源は1940年代に遡るが、それを促した当時の社会的・経済的要因はその後ほとんど消滅しており、したがって、立退料ルールが現在のようなかたちに形成されるに至った理由は、別の要因によって説明されなければならない。 (2)この点に関する有力な説明は、立退料ルールの妥協的・調整的性格が、日本社会における伝統的な紛争処理観あるいはそれを含む広い意味での<法文化>に適合的であるというものである。 (3)しかし他方では、借家制度に隣接する都市・土地・住宅法<制度>の整備の立ち遅れが、借家明渡紛争を多様なイシューをめぐる利害調整の場とし、そのことのが立退料ルールという一般条項的基準の形成を導いたという側面も確認された。むしろ研究の結果は、(2)のような法文化的説明が、借家明渡紛争処理基準明確化の前提をなす隣接諸制度の整備を極力回避したいという政策エリートの自覚的な政策選択を正当化するために-いわば戦略的に-採用されているという可能性を示唆している。これはより一般的にいえば、隠れた政策的意図を貫徹するために文化的説明が利用されるという可能性である。 (4)立退料ルールが形成されていないドイツを対象とする比較研究では、隣接諸制度の整備が高度に進展していることが明らかになっており、このことは、日本における立退料ルールの形成要因を考えるにあたって示唆的である。 3.さらに多方面のデータによって以上の仮説を補強することが、今後の課題である。
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Report
(1 results)
Research Products
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