Research Abstract |
本研究の目的は、フレックス・タイム制やみなし労働時間制など、現在、ホワイトカラー労鋤者に対する労働時間短縮策として急速に導入が進んでいる新しい労働時間制度を,企業の「合理化」策全体のなかに位置づけて実証的に研究することである。 分析の対象は,労働時間弾力化の点でもっとも先行している印刷大企業とした。 研究の結果,現在までに,次の点が明らかになった。第一に,労潮時問の短縮=弾力化策は,ホワイトカラーの生産性向上対策,人件費節約策として具体化されていること。これは,FA化による人員削減と深夜勤務手当の割増率引き下げ(交替制労働)などによりブルーカラーの人件費の節約が一段落した後に出されている点にも留意する必要がある。 第ニに,労働時間弾力化が,まず労働基準法上のフレックスタイム制を導入し,その後みなし労働時間制の利用ヘシフトしながら,実質的に拡大していること。現在までに,研究開発部門や営業部門ではみなし制にシフトした。事務部門ではまだだが,法改正による規制緩和とともに導入を図ろうとしていると推察される。 第三に,新しい労働時間制度に対応して賃金体系が変更された。毎月の賃金では手当を,さらに賞与の際には奨励金等を新設している。また,みなし労働時間制ヘシフトした部門の場合,実質的には時間外手当がつかなくなっている。この制度のもとでは所定外労働時間の増大が賃金コストの増大に結びつかない。残業手当なしでの残業による勤労意欲の減退を,賃金にしめる人事考課分の増大によって抑制しようとしている。 最後に,新設された手当の支給率は,所定外労働時間が減少したことを理由に一律に削減されてきている.今後は,労働時間に関する実質的裁量権が労資どちらにあるのか,労働時間の個人別管理の実態、「サービス残業」の存在等について研究を進めたい。
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