Research Abstract |
本研究では,戦時統制経済期から戦後高度成長期にいたる日本の財閥・企業集団における企業間結合の変貌過程の実証研究のための基礎的資料の収集とデータ整理にとりくんだ. 企業間結合分析の指標として,(1)株式所有,(2)資金調達(供給),(3)人的結合,(4)生産・流通過程での連関の4点を設定したが,今年度は,戦前期の三井財閥傘下の金融期間である三井銀行,三井信託,三井生命保険について,(2)(3)に関する資料収集とデータ整理を中心とする以下の作業をおこなった. 1.三井銀行,三井信託,三井生命保険の資金供給,人材派遣などの変遷を長期間にわたって把握するために,3社の取締役会議録をパーソナルコンピュータを用いてデータベース化した. 2.三井銀行の大口貸出先との取引関係を把握できる「抜粋大口貸出先」のデータをパーソナルコンピュータに入力し,整理した. 3.人的結合関係把握のために,三井財閥傘下各社の職員録などをデータベース化する作業の準備を進めた。 4.以上の作業に必要な資料のマイクロフィルム収集と印画紙焼きつけを行った。 これらのデータの分析から,戦前期の三井財閥傘下金融機関の資金供給が極めて限定された数の大口取引先に集中していた実態が鮮明になるとともに,3金融機関の分業体制の存在が明瞭となった。また,戦時期における財閥横断的強調融資の展開も具体的に把握できた。 三井以外の財閥における金融機関を軸とした資金供給関係,また三井も含めて第二次大戦後における変貌,上記分析指標(1)株式所有,(4)生産・流通過程での連関などについての資料収集・分析に引き続き取組みたい。
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