Research Abstract |
理工学の種々の応用分野に現れる常微分方程式系は,通常の数値解法では取扱いが困難な系,いわゆる,硬い常微分方程式系となることが多い.本研究では,そうした硬い系の典型として,微分方程式と代数方程式が混在した系である微分・代数系,半離散偏微分方程式と呼ばれる発展型偏微分方程式の空間変数に関する離散近似により得られる大規模系,反応遅れなど,遅れ時間を含む微分方程式系である遅延微分方程式系の3種を取り上げ,ルンゲ・クッタ法と総称される解法群の適用について考察した.微分・代数系に関してはルンゲ・クッタ法の中でも,特に,陰的ルンゲ・クッタ法と呼ばれる方法の有効性が,従来より理論的な観点から指摘されてきた.ただし,同法を計算機上で実現するためには,非線型方程式の効率的な求解法が見出すことが必要となる.これについて,有限反復簡易ニュートン法と称する方法を提案し,その有効性を理論的な考察,ならびに,数値実験により検証した.また,半離散偏微分方程式については,次数低下と呼ばれる現象が知られている.こけは,通常の微分方程式に適用した際の数値解法の精度規範である次数が,こうした系の場合には必ずしも有効ではなく,次数から期待されるほどの精度が得られないことを言う.この問題を回避する方策をいくつか提案したが,そのうちのひとつのは,並列処理技術を応用することによって,より一層の効率化を図ることが可能である。遅延微分方程式系については,自然ルンゲ・クッタ法と呼ばれる方法についての数値的な安定性を理論的に検証した.この方法の有効性は,今後,現実的な問題への適用を図る等,より実証的な方法もまじえて明らかにしていく予定である。
|