Research Abstract |
ランダムネスを含む系の推移を記述する確率過程の統計的推測は時系列データ解析をその一部とし,工学,経済学,生物学などの広範な分野に応用のある新しい統計学の分野である。本研究では確率過程の一つのクラスである拡散過程,点過程の推定,検定などの数理統計的研究と統計手法の数学的基礎付けを行い以下の成果を得た。 1.マリアヴァン解析と汎関数の漸近展開法を統計の立場から整理し,尺度混合型分布の漸近展開や,縮小推定量の分布の漸近展開を導いた。 2.統計学に現れる推定関数は連続関数の空間に値を取る汎関数と見なすのが自然である。このようなバナッハ空間に値をとる汎関数のなす空間を定義し,これが完備であることを示した。これは拡散過程のパラメトリックモデルを扱うときに重要になる。また,推定関数がある意味で滑らかなとき,推定関数に対応するM-推定量にこの滑らかさが遺伝することを示した。これによって,M-推定量に対して普通のマリアヴァン解析が適用可能となる。 3.独立観測に対して,統計量の漸近展開を証明するとき,クラ-メル条件を仮定することが多いが,マルチンゲ-ルに対して同様のことをするのは困難である。クラ-メル条件の代わりに,マリアヴァン共分散の非退化性を仮定することによって,マルチンゲ-ルにたいする分布の漸近展開が証明された。 なお,これらの研究の為に,京都大学,九州大学,大阪大学,東京大学,東京工業大学,早稲田大学,富山大学,広島大学,名古屋大学等の関連分野の研究者と情報交換,セミナー,議論をした。
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