Research Abstract |
スピンおよび荷電スピンに関して選択的な反応による原子核の応答を調べることは、核内における相互作用の複雑な振舞いを理解するために重要である。荷電スカラー型スピン励起については、選択的にそのような状態を励起する手段(プローブ)がなくほとんど知られていない。これに対し、(d,d')反応のテンソル偏極分析能およびテンソル偏極移行係数を測定すれば荷電スカラー型スピン励起状態を選択することが可能なことが指摘されている。しかしながら、これらの偏極量測定は実験的に難しく、殆ど測定されたことがない。これは偏極度の分析に使用することができる様な、大きなテンソル偏極分析能を持つ適当な反応が知られていなかったことに起因している。本研究の目的は、大きなテンソル偏極分析能を持つ、エキゾチックな1H(d,2He)n反応を利用して、高効率テンソル偏極度計のプロトタイプを設計製作し、荷電スカラー型スピン集団運動状態を調べることである。 2Heは非束縛粒子であり、極短時間で二陽子に崩壊する。その二陽子は、約0.7Mevをピークとする相対エネルギー分布を持っており、実験室系では小さな相対角度(数度程度)を持って放出される。このような二陽子を測定するために、6.5x6.5x220cm^3のプラスチックシンチレータを密着して組み上げ、高計数率に耐え、且つ高エネルギー(d,d')反応においても使用可能な高効率テンソル偏極度計を設計製作した。現在オフラインテストを行っている。同時に実効偏極分解能のモンテカルロシムレーションを行い配置の最適化を行っている。3月に理化学研究所のサイクロトロンのビームを使い実験を開始し、荷電スカラー型スピン励起状態を調べる予定である。
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