Project/Area Number |
05740190
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水野 誠司 北海道大学, 工学部, 助手 (90222322)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1993: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | カルビン / 電子構造 / バンド計算 |
Research Abstract |
1次元性の強い炭素結晶カルビンは、現在までのところ、ミクロンの大きさの試料しか得られておらず、結晶構造とわずかの光物性が調べられているだけである。この状況は、数年前のC_<60>に関する状況に似ており、C_<60>結晶と同様に近い将来巨視的なカルビン結晶が合成されることが期待されている。本研究では、この合成に先駆けて、第一原理からの理論的アプローチによって、その基礎的な電子物性を明らかにすることを試みた。 線型に結合する炭素には、2重結合の連続するキュムレンタイプと3重結合と1重結合が交互に現れるポリインタイプの2つの型が存在する。本研究では、これら2つの型の1次元炭素結晶のバンド構造を計算した。手法は、密度汎関数法に基ずく数値基底を用いたLCAO法で、局所密度近似の範囲で行った。その結果、キュムレンタイプでは2p_y,2p_z軌道のバンドが縮退してフェルミ準位を横切っており、したがって、これらのバンドの電子(pi電子)が電気伝導に大きく寄与する。一方、2s,2P_x軌道は混成して新しい軌道を作り(sigma電子)、カルビンの結合に大きく寄与する。sigma電子のバンドは、結合、反結合バンドの2つに分かれ、結合バンドが完全に満たされるが反結合バンドは空である。piバンドは、ちょうど半分が占有されているので、パイエルス不安定性のために電荷密度波が生じバンドギャップが出現する。従って、実際にはカルビンは半導体的振る舞いをしめす。このとき炭素原子の配列はポリインタイプとなる。 なお、本研究では1次元炭素鎖を取り扱ったが、実際のカルビン結晶はこれらの鎖が並列して構成されており、この鎖の並び方が電子物性に及ぼす影響を調べる必要がある。
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