Research Abstract |
本テーマは、ゼオライトの空孔中に埋め込まれたカリウム(K)超微粒子が低温において強磁性を呈するという最近の報告に基づいて,その磁性のの性質,及び機構をNMRによって実験的に明らかにしようとするものである。LTA型ゼオライトでは,sodaliteケージが単純正方格子を組んでおり,格子間に直径11Åのsuperケージがある。そのsuperケージの中への4個ずつK原子を導入しクラスタを形成すると,クラスタの数密度に応じて転移温度4〜8K,モーメント0.13mu_B程度の強磁性が磁化測定により報告されている。この単純金属カリウムにおける強磁性は,superケージのポテンシャル内に閉じこめられたK原子の波動関数が,隣接するsuperケージを結ぶ直径5Åの窓穴を通して重なり合い,交換相互作用によって強磁性が現れるという,いわば規則正しく並んだクラスタの遍歴磁性であるというモデルが提案されている。我々は,NMRによって強磁性の出現をダイレクトに検証するとともに,この遍歴磁性的なモデルの妥当性を検証する事を目的とした。本年度は予備実験として,Kクラスタを含まないゼオライトのNMRスペクトル測定を試みた。LTAは単体でもK原子を含んでいる為,クラスタのK原子と区別する為に,本実験が不可欠である。温度4.2K,磁場6Tにおいて,スピンエコー法により,K核のNMR信号検出を試みたが,実験精度内で検出されなかった。原因としては,K核の磁気モーメントは非常に小さい為感度が低い事や,単体のゼオライトは絶縁体である為,低温でT_1が著しく長く信号の検出が不可能である,等がある。今後,高磁場での測定や,クラスタを埋めこんだ試料の測定を試みる。
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