Research Abstract |
那須茶臼岳火山は約3万年前以降,大沢火砕流堆積物,大丸火砕流堆積物群,茶臼岳溶岩流,茶臼岳火砕丘,茶臼岳溶岩円頂丘の順に形成されたと考えられる.本研究では70個の岩石を採取し全岩化学組成と斑晶鉱物の種類,量比,形態,化学組成を測定した. 岩石は,石英±かんらん石±斜方斜輝石安山岩である.斜長石斑晶は自形のもとの汚濁帯を有するなどの異常な形態を示すものが混在している.両者の量比は試料毎に異なる.斜方輝石は自形のものと単斜輝石の反応緑を有するものが混在している.後者は前者に比して小量である.単斜輝石は主に自形である.かんらん石は柱状で角が骸晶状に突出しているものが主体である.石英は他形で単斜輝石の反応緑もみられる.自形以外の形態を示す斑晶の含有率は茶臼岳溶岩流,茶臼岳火砕丘,大丸火砕流堆積物群で大きい.また,全ての層準で,径20cm程度以下の球形〜不定型の包有物が認められる.包有物はガラスと針状〜骸晶状の結晶からなる.斑晶鉱物化学組成では,斜長石,輝石で組成逆累帯,波状累帯構造,同種の鉱物で2種の組成の異なる物の共存が認められる.これらの特徴は,噴出前のマグマの状態の急激な変化,最も可能性が高いものとして,2種のマグマの混合を示唆する. 全岩化学組成は2成分組成変化図上で直線的な変化傾向を示し,SiO_2含有量は,大沢火砕流堆積物が59-62wt%,大丸火砕流堆積物群と茶臼岳溶岩流が57-60wt%,茶臼岳火砕丘が57-58wt%,茶臼岳溶岩円頂丘が58-60wt%と初期に最も珪長質で,その後苦鉄質に傾き,長後にやや珪長質に回復している.一方包有物は各層準共53-55wt%と一定している.包有物と母岩にK/Y比が異なり,起源が異なると考えられる.2種のマグマの混合を考える場合,上記のような組成変化はマグマ混合率の変化に起因すると考えられる.
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