Research Abstract |
マリアナ海域の前弧海山中に,藍閃石片岩相の変成作用を被った塩基性岩が取り込まれていることが近年明らかとなった。これらの変成を被った塩基性岩の履歴の出発点ともいえる噴出環境を明らかにし,どの様な過程を経て海山に取り込まれたかを考察するために,国際掘削計画により得られた7試料の塩基性岩片について,主要成分元素・希土類元素ならびにバリウム・ストロンチウムの分析を行った。 分析した7試料のうち,2試料はランタニドテトラド効果を反映した不規則な希土類元素パターンを持ち,激しい海水による変質の可能性を示す。他の5試料は,Nタイプの海嶺玄武岩に似た軽希土類元素に乏しい左下がりの希土類元素パターンを示す。バリウムならびにストロンチウム軽希土類元素に対する存在度やTiO_2-Al_2O_3系にみられる特徴から,これらの岩片はより海嶺玄武岩に似た化学的特徴を持つことが明らかとなった。 これらの藍閃石片岩相の変成作用を被った塩基性岩が取り込まれる機構として,以下のようなプロセスが考えられる。(1)42Maに太平洋プレートの沈み込みが始まった際,前弧域に海洋地穀(海嶺玄武岩)が取り残される。(2)沈み込むプレートのテクトニックエロ-ジョンにより,前弧域の海嶺玄武岩が削り取られ,共に地下深部へと沈み込む。(3)地下16-20km(150-250℃・5-6kb)において藍閃石片岩相の変成作用を受ける。(4)より深部において,沈み込むスラブの脱水作用により生じた蛇紋岩ダイアピルが上昇する際,この藍閃石片岩相の変成作用を受けた海嶺玄武岩を取り込み,現在の前弧海山を形成する。
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