Research Abstract |
本研究は、1)振動および回転状態を選択された分子の反応性を支配している因子、および2)反応生成物の振動回転分布などから衝突過程のメカニズムをAb-initio分子軌道法および擬古典トラジェクトリー法により理論的に明らかにすることを目的としている。研究対象として、アンモニアカチオンによる中性アンモニア分子からの水素原子引き抜き反応:ND_3^+(v)+NH_3→NHD_3^++NH_2を取り扱った。 この反応の反応断面積は、ND_3^+のnu_2モード振動量子数vに大きく依存し、vの増加にともない反応断面積が著しく増加することが実験的に知られている。従って、この反応は、状態選択的化学反応の代表例であると考えられる。本研究では、この反応のポテンシャル面をMR-SD-CI法で求め、その面上でのトラジェクトリ-計算を行うことにより、反応の詳細なメカニズムを議論しさらに反応のモデルを提出した。[H.Tachikawa and S.Tomoda,Chem.Phys.,1994,99(in press)]このモデルでは、アンモニアカチオンのnu_2モードの増加は、中性アンモニア分子からの電子の有効捕捉体積の増加と考えており、これまでの実験事実を矛盾なく説明した。 本研究では、電荷移動反応における反応生成物の振動回転状態特異性についても拡張した。低エネルギー領域での電荷移動反応の生成物の振動状態分布は,フランクコンドン機構およびエネルギー共鳴機構により議論されているが,最近これらの機構では説明できないいくつかの反応が知られるようになってきている.その1つに,窒素カチオンから一酸化炭素への電荷移動反応:N^+(^3P)+CO(X^1SIGMA^+,v=0)→N(^4S)+CO^+(X^2SIGMA^+,v,J) がある.本研究では,理論的方法により,この反応のメカニズムを明らかにし,これまでにないモデルを提出した.[H.Tachikawa et al.J.Phys.Chem.1993,97,11944]
|