Research Abstract |
研究計画に従い,アミネウミヒドラ属(ウミヒドラ科)に属するヒドロ虫Stylactaria misakiensis35個体(♂12,♀7,未成熟16)を小網代湾において,S.carcinicola11個体(♂3,♀5,未成熟3)を戸田沖において採集した.これらのヒドロ虫を室内飼育し,群体の形態と生活史を調べ種間で比較検討した結果以下の知見が得られた.1.Stylactaria misakiensisとS.carcinicolaは,生殖体の形態が異なり,クニドーム(刺胞のタイプの取り合わせ)は同じだが各タイプの刺胞の大きさに2種間で有意の差が認められ,形態的に識別できることが示された.2.この2種は異なった付着基から採集された.特にS.misakiensisは特定の付着基からのみ採集された.また,群体の一部をガラス容器に移植した場合にS.carcinicolaは容器底面に付着し成長を続けるがS.misakiensisは付着することなく退化した.これらのことは2種の付着基特異性に違いのあることを示すものであった.3.S.carcinicolaの幼生は遊泳→匍匐→待機型で,S.misakiensisの幼生は待機型であり,2種間で幼生の行動に違いがみられた.以上の形態,生活史特性における種間の差異に基づき,同種の可能性が指摘されていたS.misakiensisとS.carcinicolaが異なる種であることが明確となった. また,小網代湾から採集したStylactaria sp.41個体(♂18,♀23)のデータと北海道産のS.multigranosiの既知のデータとを比較した結果,形態,生活史特性に違いが見られず,現在のところStylactaria sp.はS.multigranosiと同一種であると考えられた. 以上の成果は,アミネウミヒドラ属の分類に新たな指標形質を提供すると共に系統関係の解明を確実に進めるものとして重要である.
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