Research Abstract |
本研究では,炭素原子をチタン表現に拡散・固溶させることにより形成される表面改質層の性状を,実験的・解析的両手法を用いて明らかにすると共に,その様な表面改質層がチタンの耐摩耗性および耐食性等の機械的性質に及ぼす効果について詳細に検討した.なお,当初の計画では,炭素原子をチタン表面に固溶させる方法として,イオン注入法を用いる予定であったが,イオン注入装置の不具合のため,実際には,アセチルセルロース樹脂を用いて炭素微粒子(粒子径:100mum)をチタン合金表面(Ti-6A1-4V)に固着後,CO_2レーザーを照射するという方法で表面改質層を形成させた.本研究で得られた結果を以下にまとめて記す. 1.炭素原子をチタン合金表面に固溶(処理条件:500W,10sec)させることにより,ビッカース硬さHV1700に及ぶ高硬さを有する表面改質層(改質層厚さ:140mum)の形成が可能である. 2.かかる表面改質層を形成させたチタン合金の摩耗量は,未処理の場合に対して約1/6に低減されることから(ピンオンディスク形式摩耗試験,負荷:0.25MPa,相手材:4340焼入れ鋼),上述の表面改質層の形成は,チタン合金の耐摩耗性を改善する上で有効であると言える. 3.濃塩酸環境(濃度:11.3N)では,チタン合金は活性溶解するため耐食性は著しく劣るが,表面改質層を形成した場合,かかる表面改質層が濃塩酸環境から母材部を保護するため,チタン合金の耐食性は著しく改善される. 4.上述の表面改質層の性状を原子レベルから評価するため,第1原理に基づいてTiCに電子状態に関する検討を試みた.なお,本方法を用いたTiCに関する検討は未だ基礎段階にあり,現状では実験的に求められているTiCの格子間隔と第1原理に基づいて本研究において求めたそれが,5%の精度で一致することが明かとなった段階である.
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