Research Abstract |
レーザ照射による表面硬化法は,自己冷却作用を利用して急冷硬化するため特別の冷却剤を必要としないこと,局所的に短時間に処理できること等の種々の特徴を有している.また,光学系を用いて処理装置の端末部を移動させることができるため,稼働中の機械・構造システムに対して設置状態のままで焼入れ処理を施すことが可能である.従って,この方法を応用して構造材料の疲労損傷を修復できれば,非常に簡便かつ経済的に機械・構造システムの疲労破壊事故を防止することができる. このような観点から申請者らはこれまでに,予き裂材の疲労強度に及ぼすレーザ処理の効果について検討を行い,その結果,予き裂全体がレーザ焼入れ領域に内包されるような場合には,予き裂材の疲労強度は平滑材の疲労強度レベル近傍まで上昇することを明らかにした.本研究はレーザ処理による疲労損傷修復機構について破壊力学的観点から検討を加えることを目的とし,残留応力ならびにき裂開口変位の測定を行った.その結果得られた結論を以下に示す. 1.レーザ焼入れを施した領域には300〜400Mpa程度の圧縮の残留応力が生ずる.これは,レーザ照射領域のマルテンサイト変態に伴う体積膨張に起因する. 2.予き裂がレーザ焼入れ領域に内包される場合には,前述の圧縮残留応力によりき裂先端が閉口する.その結果,レーザ焼入れを施されたき裂は,繰返し負荷のもとで進展せずに停留する.このような場合には,疲労強度上昇効果が認められる. 3.一方,予き裂寸法が比較的長い場合には,予き裂の先端はレーザ焼入れを施した場合においても閉口しない.この場合には,予き裂は停留せず引き続き進展し最終破壊を導く.
|