Research Abstract |
本研究では,生体細胞凍結のメカニズムを解明するため,冷却速度を制御可能なムービングベッドを作成し,純水,塩水溶液,タンパク質水溶液の凍結挙動に関し実験的研究を行った. 試料はカバーガラスに挟まれ(間隔150mum)ムービングベッドの試料台(銅製)上で冷却されるが,試料台は液体窒素温度の冷却恒温ブロックと加熱ブロック上に位置し,両ブロックの温度を一定に保ち,試料台を低温側へ移動することで試料を凍結させる.ブロックの間隔,温度,試料台の移動速度を変えることで冷却速度を変化させた. 純水の場合,冷却開始後まず,過冷却状態となり,過冷却解除が起こると,急速に氷晶が成長しデンドライトを形成する.その後氷晶は温度分布に沿って平らに進行する.純水の場合,この凍結挙動は実験範囲内では全てに共通であった. 塩化ナトリウム水溶液の場合,過冷却解除の後,急速に成長したデンドライト状氷晶は,平衡凝固が進行する間にも見られ,本実験範囲内では常にデンドライトを形成していた.しかし,デンドライトの形状が水溶液の濃度と冷却速度に依存することも分かり,概略,高濃度,高冷却速度ほどデンドライトの間隔が細かいという特徴があった. 蛋白質溶液としてはアルブミン水溶液を用いた.塩化ナトリウム水溶液同様,デンドライトが現れたが,アルブミンではデンドライト先端部の曲率半径が大きく,単純な塩と高分子量の蛋白質では凍結時に氷晶に与える影響が異なることが分かった. また,アルブミンと塩化ナトリウム両者の水溶液では氷晶の形はアルブミンのみのものと近い結果となった.
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